思いこみと感情にまかせて文章を書くのは恥ずかしいものだという「他山の石」にしながら。
「豪雪の被害がたいへん……でも、なんであんなところに人が住む?」
http://homepage.mac.com/naoyuki_hashimoto/iblog/C1310380191/E20060110214546/index.html
自衛隊の仕事は、外敵の侵略から国を守ることだ。雪が降ったからと言って、外敵侵入の危険が減ったわけでではない。自分の職務をないがしろにするな!
(書きかえられる前は、こういう表現でした。)
自衛隊の任務には災害派遣があります。自衛隊法・第83条に明示されています。豪雪による被害が出ているなら、それも災害です。
しかし災害から離れて考えてみても、「雪が降ったからと言って、外敵侵入の危険が減るわけではない」がゆえに、降雪・積雪時の国土の状況を良く体得しておく必要があるはずです。雪の経験を積んでいないと、降雪時の実戦に役立たないどころか、現実的な作戦の立案さえ危ういでしょう。
また、一旦有事の際の補給路確保のためにも、交通路の除雪の経験は不可欠と思われますが、このことへ想像が及ばないのは兵站の軽視であり、それは旧軍の過ちと同じものです。
「雪が降ったからと言って、外敵侵入の危険が減るわけではない」という点に疑問を差し挟む気はありませんが、それならば「地震が起きたからといって、外敵侵入の危険が減るわけではない」こともまた認めざるを得ないでしょう。とすれば、災害出動を「自分の職務をないがしろにするな!」と一喝するなら、震災に自衛隊が出動することも非難しなければなりません。そして橋本尚幸氏は阪神大震災で被災されたのではなかったか。とすれば、「ご自分は自衛隊の助けを得ていながら、自衛隊が他者を助けることには反対するのか」という疑問を抱かざるを得ませんし、非人道的・傲慢・身勝手・我が儘のそしりをも免れ得ないでしょう。
さて、該当のエントリーはその後書きかえられて、次のような文が付け加えられました。
雪掻きなら地方自治体の経費での消防主体で十分出来るはずだし、やるべきだ。 大災害とは訳が違う。
消防には豪雪時の除雪は無理です。理由は簡単です。装備がないのです。
消防は積雪時、管轄区域内の消火栓を回って除雪を行っていますが、その装備はスコップです。
では、なぜ消防に除雪のための大型機械がないのか。これも理由は簡単です。消防の本分は第一に火災の鎮火であり、「雪が降ったからと言って、火災発生の危険が減るわけではない」のです。
実際の除雪作業は、国道は国土交通省の国道維持出張所が、地方道は都道府県の建設事務所が担当し、さらに細かい市町村レベルは建設課だったり土建業者に委託していたりします。除雪費用は当然予算に計上されていますが、例年の規模を超える豪雪時には除雪予算が底をつき、補正予算を組む必要があります。しかし議会の承認を得るまでには時間がかかり、それを待てないから援助を求めざるを得ないのです。言わば「前借り」です。
そして、豪雪は大災害です。水害で土砂崩れを起こして道路がふさがれ孤立するのと、雪で道路がふさがれ孤立することにどれだけの違いがありましょうか。橋本氏がしばしば称揚される日本経済新聞の1月12日の社説(ウェブ魚拓キャッシュ)には、1963年の「三八豪雪」における被害として「死亡・行方不明231人、6000の家屋が壊された。」という数字が出ていますが、これは大災害と呼ぶに充分すぎるほどではありませんか。
豪雪時の雪の積もり方をご存じないから気楽なことが言えるのでしょうが、それは音もなく、しかし驚くほど早く積もっていきます。僕の住んでいるところは今回、30cmほどの積雪ですんでいますが、それでさえ家の前の道路を除雪するのに、のべ3時間を要しました。2mもの積雪を個人で除雪するなんて、思っただけでも途方に暮れます。(当地は山岳からは程遠い平野部ですが、昭和初期の豪雪時には2階から出入りするほど積もったと聞いています。その時は陸軍が出動したそうです。)
みんなあんなところに住むのは止めて都市部に出てくるのが、その人にとっても楽だし、日本経済全体の費用節減にもなる(社会インフラへの投資を拡散させるのではなく集中させることが出来るからだ)。
(書きかえられて「都市部に出てくるのが、」とされていますが、書きかえられる前には「東京」とはっきり地名をあげておられたこと、および、橋本氏の過去のエントリーを読んでいくと、氏は「都市」という言葉について、地方都市を都市とは認めない独自の定義を用いておられるらしいことが察せられることから、この文の「都市部」は書きかえられる以前の「東京」を示すものと解釈します。)
マクロ経済分析を行っていたとプロフィールに書かれているほどのお方の提言なのですから、思いこみによる抽象的な表現ではなく、根拠ある数値を使っての具体的な試算がほしいところですが、しかし。
橋本氏のはてなブックマーク(ウェブ魚拓キャッシュ・キャプチャ)に「Sankei Web 社会 衛星「はるか」の運用終了 送信機用の電源を切断(11/30 20:18)」というのがありますが、そのコメントに曰く「小惑星の岩石はどうなる?」。
「はるか」は地球周回楕円軌道上の電波望遠鏡衛星ですから、小惑星の岩石は関係ありません。小惑星に行ったのは「はやぶさ」です。
この二つ、文章を普通にきちんと読んでいれば混同するはずがないのですが、ということはつまり、文章をきちんと読んでいない(または、きちんと読めない)から混同していると考えるのが自然かと思います。
文章をきちんと読まない・読めない人に、資料を読み解いて具体的なデータを用いて試算することを求めるのは、あまりに酷というものでしょう。
雪国の農家も今現在は農業で曲がりなりにも収入を得ています。農業に補助金が出ているとはいっても、農家収入の全てが補助金ではありません(もしも「農家収入=補助金」なら、補助金は税金から支出されるものである以上、我々消費者が農産物を買う際に支払っているお金は消費税分をのぞく全てが流通コストということになってしまいます)。
それを収入源を捨てさせて東京に移住させて、果たして全住民の生計が成り立ちうるのか。特に過疎地の農家は高齢化が進んでいますから、慣れない東京に移住させて職に就けるかどうか、生計を立てられるかどうか、困難があるだろうことは人並みの想像力があれば思い当たるかと思います。このあたり、三宅島の避難民が置かれていた状況が大いに参考になるでしょう。
自発的に東京に移住してうまくいかなかったのなら、それは自己責任だからと突き放すこともできます(それが好ましい政策かどうかは別として)。でも、行政が強制的に移住させた場合、その後のことは知らんぷりというわけにはいかず、行政が援助する必要が出てきます(高齢化が進んでいればこそ「老い先短いから放っておいて死ぬのを待つ」という手段もあり得るでしょうが、そういうことを平然とやってのける国が民主主義国として世界に認められますかどうか)。そういう社会保障コストなどを勘案した上で、数年から数十年に一度の豪雪の除雪コストと比較する必要があるように思います。
そして、「社会インフラへの投資が集中できる」という点も、注意が必要です。例えば治水関係では、地方では多くが50年から100年に一度の豪雨を想定して設計・施工されていますが、首都圏では多くの場合、150年から200年に一度の豪雨を想定したものになっているはずです。
しかも、200年は100年の2倍だから建設費用も2倍ですむかというと、そうはいきません。概ね4倍、またはそれ以上の費用がかかると考えて良いと思います。集中させれば費用が節減できるというのはあまりに単純な認識のように思われ、実際に節減可能かどうかは子細に検討されてみられるべきでしょう。
ついでにもう一つ。
今後、関東地方が直下型地震や海溝型地震に襲われる可能性を考えると、これから東京に人口を集中させていくことが好ましいとは思えません。特に長周期地震動について、現在の高層建築はまだ本格的な洗礼を受けていません。
(以上、1月11日午後10時55分、12日午後5時32分、13日午後9時55分に加筆しました。)
以下、1月18日午後9時44分追記。
僕が橋本氏の該当エントリーへ送ったトラックバックは11日午前8時頃に削除されたのですが、橋本尚幸氏は何を思われたか、自画自賛エントリーのトラックバックを送っておいでになりました。なかなか鉄面皮な方だな、というのが僕の橋本氏への感想です。しかしながら、内容は豪雪とは直接の関係はないとはいえ、削除はしません。
仮にも「言論の自由」の恩恵を被っている私達が、自分の言説については賛成意見のトラックバックばかりで固めて読者を異論から隔離する検閲じみたやり方をとるのは自己矛盾のように思えまして。
以下、1月24日午前1時01分追記。31日午後9時51分に不適切な表現の変更・削除と追記。
1月19日午後8時30分に閉鎖したコメント欄を24日午前0時53分に再開しました。コメント欄を閉じた理由などを述べます。
前述の通り、18日夜に余丁町散人・橋本尚幸氏の自賛エントリーからトラックバックがあったわけですが、僕の送ったトラックバックを削除しながら、余丁町散人・橋本尚幸氏がトラックバックを送ってきたことには大変に違和感を感じました。ですが、ひょっとすると豪雪被害について議論する意向を暗に示されたのかも知れないと思い、この自賛エントリーへトラックバックを送ってみました。同時にそこで引用されているアクエリアン氏のエントリーにも、同じ話題を扱っていらっしゃるのでトラックバックを送りました。18日午後10時07分頃のことです。
しかし、自賛エントリーへ送ったトラックバックはすぐに削除されたようで(18日午後10時12分01秒以降と推測)、結局、余丁町散人・橋本尚幸氏に議論の意志が全くないことがはっきりしました。
ところで、この自賛エントリーは、言ってしまえば“慰めてもらってうれしかった”という内容に自分のスタンスを付け加えただけで、豪雪被害に関するご自分の主張を補強するような材料どころか、そもそも豪雪被害と直接関係ある内容は全くなく、加えてその後、他にも余丁町散人・橋本尚幸氏の見解に批判的な内容を書かれていた方々のブログのコメント欄にことごとくこの自讃エントリーのアドレスを貼り付けているのを見て、僕は余丁町散人・橋本尚幸氏はスパマーであると認識しました。
氏はその後19日夜にブチ切れエントリーを書かれたわけですが、その内容は例えば、朝青龍と全盛期の北の湖はどちらが真に横綱らしいかを論じる相撲ファンがいたとして、その相撲ファンに向かって「そう言うお前はよほど優れた横綱なんだろうな」と言うのにも似たナンセンスなバカバカしさを感じて笑っていたのですが、しかし自賛のエントリーはトラックバックを送ってきておきながら、そのブチ切れエントリーはトラックバックしてこなかったことに、“こちらが気付くのが遅れれば、その間にコメント欄が荒らされるであろうことを期待する意図がある”と推測し、また自讃エントリーを書かれた際のコメントスパム行為も合わせて考慮して、予防的にコメント欄を閉じるべきと判断しました。同時にコメントスパム・トラックバックスパム対策としてNGワードをひとつ追加しました。
(余丁町散人・橋本尚幸氏は1月22日にアクエリアン氏のエントリーのコメント欄に妙なコメントを送っています。内容的にコメント欄よりもメールの方がふさわしいように思われるもので、結果的に荒らしの類似行為のように見えなくもありません。)
ところで、このブチ切れエントリーには奇妙な記述があります。
冒頭の文に「たまたま見つけたページ。」とありますが、1月11日午前7時48分15秒から同日午前8時00分43秒にかけて、http://www.haloscan.com/members/tbposts.php から始まったアクセスが4回ありました。このURLはトラックバックを管理するページのものと考えられ、つまり余丁町散人・橋本尚幸氏以外からのアクセスとは考えにくいのです。従って氏は僕が送ったトラックバックでまずこのエントリーを読んでいたのであって、決してたまたま見つけたのではないことは明らかと言っていいでしょう。
ここで特に指摘しておきますが、余丁町散人・橋本尚幸氏が自讃エントリーのトラックバックを送ってきた1月18日午後9時02分には、19日のぶち切れエントリーで問題にされた僕のコメントは既にあった(16日午後10時36分)わけで、18日夜にスルーしていたものを19日の夜になって取り上げたのは非常に不思議です。17日午後9時02分15秒に余丁町散人・橋本尚幸氏のものと考えられるアクセスがあったのですが。
余丁町散人・橋本尚幸氏が豪雪被害について、最後の最後まで根拠もデータも前例も全く示すことなく、ただただ感情的なエントリーの量産に終始されたことは、非常に残念です。
なお、1月31日午後9時51分現在までに、余丁町散人・橋本尚幸氏からの削除要請が全くないことを申し添えておきます。